2024/7/8

P&Gジャパンのサプライチェーン戦略
~DXの活用により、物流最適化を推進~

サプライチェーンは、物流コストの高騰や人手不足、環境問題への配慮、即日配送などの消費者の期待値の高まりにより、かつてないほど多くの課題に直面しています。 特に物流の「2024年問題」では、2030年には輸送能力が約30%不足すると試算されており、物流コストの更なる上昇に加えて、配送の遅延が発生し、店頭での商品の欠品リスクが高まる恐れがあると言われています。

こうしたサプライチェーンの課題に対し、P&Gジャパンは包括的に様々な取り組みを実施しています。その中でも特に、AIなどのデジタル技術や、流通パートナーとのデータ協働といったDX(デジタルトランスフォーメーション)により、革新的なサプライチェーンの構築 を推し進めています。

P&Gジャパンのサプライチェーン戦略 ~DXの活用により、物流最適化を推進~

P&Gの競争力の源泉となる高度なサプライチェーン


世界最大の日用品メーカーであるP&Gは、数多くのブランド・製品を180以上の国々、約50億人の消費者に利用いただいており、そのために高品質の製品を毎日安定的に供給し続けることが大きな使命であると考えています。日本市場においても、P&Gジャパンは数多くのブランドを展開し、国内工場から輸入製品も含め、高度で複雑なサプライチェーンを有しています。そのため、革新的な製品やブランド、人材だけでなく、サプライチェーンもまたP&Gの大きな競争力の源泉となっています。

またグローバル規模のノウハウと、日本ならではの知見を併せ持つことがP&Gジャパンの大きな強みであり、それらのノウハウを最大限活用したデジタル技術を導入し、サプライチェーンのDX化を推進しています。

世界で4社しか選ばれていない「サプライチェーン・マスター」に認定

P&Gのサプライチェーンの革新的な取り組みは、業界をリードするコンサルティング会社であるガートナー社からも高く評価されており、過去何度もトップランク入りをしていることから” サプライチェーン・マスター” として殿堂入りも果たしています。そして、ガートナー社から特に大きく評価されているポイントが、デジタル変革の促進、AI技術の活用です。

サプライチェーンのDX化により、物流最適化を推進


P&Gジャパンは物流最適化を推進するべく、DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用により、①タッチ回数(注)が少なく、②高精度な予測が可能な、③消費者起点のサプライチェーンの構築を進めています。

サプライチェーンのDX化により、物流最適化を推進

以下の「自動配車システム」や、「AI出荷予測システム」といった革新的な取り組みにより、物流のDX化を推し進め、トラック台数の削減を含めサプライチェーン全体の効率性を向上するとともに、常に店頭に製品を供給できるよう最適な在庫計画を可能にしています。

(注)タッチ回数:生産された製品が消費者に届けられるまでに発生する作業回数。

トラック輸送の効率化を実現する「自動配車システム」

P&Gジャパンは2020年より、配送トラックの台数を最適化するべく、タッチ回数の少ない最も効率的な配車プランを瞬時に導き出す「自動配車システム」 を導入しました。

このシステムは、最短ルートや、積載効率、ドライバーの運転時間や出荷先での労働・待機時間など、輸送にかかる様々な要素を考慮するアルゴリズムにより、効率的な配送ルートや配送の組み合わせを自動で算出するものです。数百件の発注・オーダーをわずか5分で分析し、最適な配送プランを瞬時に作成することが可能になりました。

これにより、例えば、従来はエリア配送センターから納品先まで複数のトラックで配送していたところを、同一エリア内にある複数の出荷先の配送オーダーを組み合わせ、1台のトラックに混載し、工場から直送することを可能にしています。

自動配車システムによる改善例

自動配車システムによる改善例

本システムの導入により、従来に比べて工場直送比率を15%、トラック積載効率を5%改善し、結果としてトラック台数の7%減少、輸送時のCO2排出量削減を実現しました。

サプライチェーン全体の最適化を実現する「AI出荷予測システム」

P&Gジャパンでは、トラック輸送の効率化だけにとどまらず、AI技術や流通パートナーとの協働により、高精度な需要予測を可能にし、常に消費者が欲しい製品が並んでいる店頭を実現するべく、「消費者起点」のサプライチェーンの確立 に向け取り組んでいます。

2020年に、一部の流通パートナーと「AI出荷予測システム」の試験的運用を開始し、売上、出荷、在庫、発注、将来の販促プランなど様々なデータを連携し、AIを活用した高精度な需要予測が可能になりました。 通常、在庫リスクを避けるために、流通パートナーからの発注は小ロットや直前の発注が多くなる傾向にありましたが、高精度な需要予測をベースにした「AI出荷予測システム」により、流通パートナーに対してより最適な在庫計画、発注量、発注頻度の提案が可能 となり、まとまった量を早期に発注していただく仕組みを作っています。

この早期・大ロット受注の実現により、サプライチェーン全体での生産計画と在庫計画が最適化され、店頭での製品の欠品を防ぎます。また、輸送トラックの事前確保だけでなく、積載効率の向上にも大きく貢献するため、トラック輸送の効率化に寄与 しています。

AI出荷予測システムのメリット

AI出荷予測システムのメリット

サプライチェーンのAI活用を加速し、物流の「2024年問題」に対応


今後は、試験運用を経て出た実績を基に、より多くの流通パートナーとの協働を通して 「AI出荷予測システム」を本格稼働 し、2024年問題で不足すると言われている約30%の輸送能力をカバーするべく、これまで以上にトラックの積載効率を高め、物流効率の更なる向上を目指します。また、生産計画や在庫補充計画の更なる最適化を推し進めることで、適切な供給計画を実現し、常に消費者が欲しい製品が並んでいる店頭を実現するべく、流通パートナーとの協働を強化します。

また、出荷予測システムで使われるデータを活用し、高度な 「AIトラック台数予測システム」を導入 し、高精度な出荷予測に基づいて事前に輸送トラックを確保し、より安定的な配送の実現に取り組みます。